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本メールマガジンは、文京学院大学女子中学高等学校の新しい試みを見つめる、教育評論家の河本敏浩が、お送りするレポートです。学校説明会では伝えきれない「文京」の魅力的な試みを様々な角度から詳しく取り上げていきます。
なお本メールマガジンは、事実関係に間違いがないよう内容の許諾を学校から受けていますが、書かれた内容の責任に関しては、編集責任者である河本敏浩が負っています。

(発信者について)
【編集責任・河本敏浩】
教育評論家、学研web講座講師
河合塾、東進ハイスクールを経て現職。現在は、学研web講座統括責者として、ICT教育の普及に力を注いでいる。著書多数。本メールマガジンでは、アウトサイダーの視点から、文京学院大学女子中学校高等学校の変革への意欲と変化の様子を、公平に偏りなくお伝えしていきます。

Bunkyo Report No.7:科学塾・SSHプログラム編(1)

12月

11日

2013

12月は3週にわたって科学塾、SSHプログラムについて、ご担当の棚橋先生、椎名先生、織田先生にお話をうかがいます。科学塾は文京学院の独特な取り組みで、学校が主宰する本格的な科学教育実践の場ですが、SSH認定を含めて、その先進性を余すところなくレポートさせていただきます。

第1週は科学塾の立ち上げからSSH校認定までの歩みを、その最前線で指揮された棚橋先生にお話をうかがいます。

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科学塾インタビュー 2013・12・11 at 文京学院

 

 

Q、まずは文京学院がSSH認定校になった経緯を教えてください。

 

棚橋)そもそもの始まりは、文京学院大学との高大連携講座とそれに連動したサイエンス・パートーナーシップ・プロジェクトの取得がきっかけです。

 

Q、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(以下SPP)について説明をお願いします。http://www.jst.go.jp/cpse/spp/about/index.html(現在は、サイエンス・パートナーシップ・プログラムに名称変更)

 

棚橋)これは高校での科学教育を推進するために文科省が導入した支援制度で、先進的な理系教育プログラムに対して国からの援助が受けられるというものです。そもそもは、このSPP選定を得て文京学院大学との高大連携講座を設定しようと考えたのです。2008年春にこのSPPの認定を受けることができ、ここから文京の新しい科学教育が始まりました。

 

Q,具体的にはどういったプログラムを実施したのですか。

 

棚橋)本格的ですが早速、大学で取り入れられていた豚の解剖を高校でしてみようということで文京学院大学の解剖学がご専門の樋口先生のご指導の下、まずは解剖実験を行うところから始めました。さらに地域連携ということで、当校の施設・設備を使って小学生を招き、様々に楽しめて学びの深い実験教室を開催したりもしました。ただしこの段階ではSSHについてはまったく念頭に置いていませんでした。

 

Q、SSHとは何かという点はさておき、まずは高大連携講座を実施するところから始まった点が今に引き継がれている点ですね。

 

棚橋)樋口先生のご協力もあって非常に好評で、活動報告を文科省にしたところ、2010年を代表するSPPの取り組みとして、採択校数百校に中から数校ほどが選ばれ、講座の様子を紹介する『SPPで進化する科学の`こころ`』として科学技術振興機構でDVD化され、全国に配布されました。このとき私たちの取り組みが高く評価されたのだと強く感じました。この評価をきっかけにSSHの認定を学校の目標として掲げようと考えたのです。

 

Q、ここでSSHについて説明します。SSHとはスーパー・サイエンス・ハイスクールの略で、理系教育に特段の意欲と実践力を持つ高校を認定し、国が支援をする制度です。しかしこの認定には明確な傾向があります。

http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/gakkou/1309941.htm

 私見ですが、SSH認定校は伝統的な受験進学校が選ばれることが多く、文科省の意図は、やはり国際的に活躍できるような科学者を育成したいというところにあると思います。SSH認定校はほとんどがそういった「特別な高校」に集中している傾向にあります。そういった中で文京学院の認定は希有なことだと言えます。何が認定の決めてとなったのでしょうか。

 

棚橋)もちろん先行する実践があったからこそのことですが、しかし本格的に申請を考えるようになったのは文京の変革の波と歩調を合わせてのことです。国際塾の開設も決まっていましたし、もしSSH認定が取れたならば、『学校設定科目』として思い切った本校独自のカリキュラムを設定できますし、放課後の時間を有効活用し、どこにもない個性的なプログラムができると思ったのです。

 

Q、実際には何年から申請を始めたのですか。

 

棚橋)申請を開始したのは平成22年度に開始するためのもので、今から4年前のことです。まさに一見無謀とも思えるトライでした。率直に言って、まず理系選択者の少ない女子校であること、さらにいわゆる受験実績校ではないこと、これらを考えると、そもそも認定されるのかというところから疑問符がつきまといました。

 

Q、実際にはどのような経緯で認定に至ったのですか。

 

棚橋)SSHの認定は比較的大きな予算が付くプロジェクトなだけに認定されるのは非常に困難です。22年度実施に向けてまず申請をスタートしましたが、最初はやはり採択には至りませんでした。そこで翌年から若干戦略を変えることにしました。申請にはどういった取り組みをするのか詳細に説明する必要があるわけですが、その翌年から、普通の女子校がSSHに参画することの意義を前面に出すという戦略に立って申請を進めることにしました。SPPでの実績、文京学院大学との連携、さらに21年から始まっていた工学院大学との高大連携協定による協力もあり、裾野からの女性の理系研究者育成という意義を訴えて申請に臨みました。

 

Q、しかし翌年も認定を受けることはできなかった、ということですよね。

 

 

棚橋)その通りです。しかしその前年に比較して非常に手応えがあったのも事実です。女性の理系研究者育成はすでに国策と言ってよいほど文科省も意欲的でしたし、何よりもその時すでに文京学院の取り組みは非常に個性的で、他にないプログラムが多かったのです。

 

Q、そしてその翌年認定を受け、晴れてSSH校になったというわけですね。

 

棚橋)SSH校に認定されるだけでなく、驚いたことにコアSSHにも認定されました。コアSSHは、理数系教育における「地域の中核拠点」枠として申請が認定されました。ただでさえハードルの高いSSH認定に加え、コアSSHはさらにハードルが上がります。そしてこの二つの認定を同時に得たのは、この年文京学院のみでした。コアSSHは全国で25校、コアの中学拠点枠では当時12校しか選定されず、コアSSHとSSHの同時認定は異例で、かつそれが伝統的な進学校とは言えない文京学院に認められたということはまさに大きな驚きでした。何かを託されたという強い使命感を感じました。

 

Q、そして平成24年から実施に至った訳ですね。

 

棚橋)その通りです。今年でSSH認定校として2年目が過ぎました。SSHの認定は5年で一区切りなので、来年が折り返しです。またコアSSHの方は、2年で一区切りなので、いったん申請したプロジェクトは終了となります。

 

Q、認定・実施までの経緯はよく分かりました。では実際にどのような形でプログラムを実践しているのでしょう。

 

棚橋) SSHに関連するプログラムは、国際塾と並んで科学塾という学校主宰の課外活動の拠点があったので、そこを利用して展開しようと考えました。他のSSH校では、ごく一部の理系生徒に一時的なケアをするというプログラムに止まるか、全校生徒対象に著名な科学者を招いて講演・講義を行うというところに止まることが多くあります。しかし文京では、女性研究者の育成という大義がありますので、なるべく包括的に、網羅的に、継続的にプロジェクトに生徒が取り組むという形にしかったのです。

 

Q、なるほど。科学塾という名の下に、部活のように展開していると考えたらよろいのでしょうか。

 

棚橋)基本はそういうことです。つまりこの科学塾では、いくつものプロジェクトが同時進行で展開しているのです。高大連携、産学連携などを梃に、生徒はいずれかのプロジェクトに参画し、それを担当教員がフォローするという形を取っています。生徒は、各プロジェクトの中で実験あるいは演習を重ね、最終的にはプレゼンテーションまで行います。単に座学として勉強するのではなく、アクティブラーニングを導入し、新しい教育実践に取り組んでいるのです。

 

Q、この科学塾には文京生全員が参加しているのですか。

 

棚橋)中学生で本格的に参加する者はほとんどいません。その意味で科学塾は高校生中心となります。また高校生と言っても、科学塾への参加はあくまでも理系研究に関心のある生徒に限られますので、全員が漏れなく参加しているわけではありません。その意味では確かに部活動に似ていると言えます。ただし理数クラスの生徒だけは、何らかの形で何らかのプロジェクトに参画しています。理数コース以外の生徒ももちろん参加しますが、その意味で中核を担っているのは理数クラスの生徒ということになります。

 

Q、学年で分けていたりはしないですか。

 

棚橋)生徒は自分の参加したいプロジェクトを選んで参加するわけですから、学年によるカテゴリー化は全くしていません。プロジェクトに学年は関係なく、また関係ないからこそプロジェクトは切れ目なく毎年継続して行われることになります。もちろん人が集まらなくなればプロジェクトも終了ですが、しかし参加している生徒がいる限り、プロジェクトは存続します。中には実験を進める過程で興味深いテーマが浮上し、新たにプロジェクトが立ち上がり、数名がその新しいプロジェクトに移行するという派生型の展開も実際にはあります。これもまた興味深い点です。

 

Q、確かに他の高校ではまず存在しない形ですね。

 

棚橋)新しい挑戦をしているという自負は強くあります。幸い、これらの活動は、それほど大々的に広報をしているわけではありませんが、「見つけてくれる」受験生親子が確実に増えてきています。またそういった期待に応えるためにも、次なる課題として二つのテーマを私たち教員は設定しています。

 一つは文京学院の中学生にも科学塾に積極的に参画するよう促すこと、今一つは英語や国語、家庭科の先生を巻き込んで、複眼的な思考を持ち、かつ高度なプレゼンができるような力を持つ生徒をさらに多数輩出することです。この二点が来年度の目標です。

 

Q、ありがとうございます。大変革新的な試みだということがよく分かりました。ありがとうございます。(次号に続く…次号ではプロジェクト指導の前線に立つ椎名先生、織田先生へのインタビューを掲載し、さらに具体的に文京科学塾の先進的な試みを紹介します)

Bunkyo Report No.8:科学塾・SSHプログラム編(2)

12月

11日

2013

科学塾・SSHインタビュー 2013・12・17 at 文京学院

Q、まずはSSH指定校としてどのようにカリキュラムを組んでいるのか教えてください。

 

棚橋)SSH指定校になるということは、学校内の授業時間内に学校独自の科目を設定できるのです。この点が実は極めて重要なのです。

 

Q、それは学校の時間割の「英語」や「数学」とい科目と並んで「学校独自の科目」が存在するということですか。

 

棚橋)まさにそういうことです。もちろんどういった内容の科目を行うかについては認可が必要なのですが、カリキュラムの一部を独自に作製できるということがSSH指定の魅力です。しかしそれは同時に重圧ともなるものです。

 

Q、SSH指定となるということは、独自科目を設定し、そのうえで特別な予算が配分される、さらにその効果については厳しく精査されるということですね。

 

棚橋)その通りです。よってSSH指定校になるということは教員団の強いモチベーションがもちろん必要ですが、認定から実施、さらに検証までを含めると、どのような生徒を育てるのかと言うことを明確にした3年間の目標・指導計画を立案し、申請をすることが求められました。5年間の採択期間があるのは、その後のカリキュラムの評価と普及ということも含まれるからです。

 

Q、一般的にSSHプログラムと言えば、ノーベル賞科学者を招いての講演会であるとか、数学オリンピック参加などの支援というイメージが強いのですが…

 

棚橋)そういった内容もあるにはあるのですが、しかしそれはSSHの一般的なイメージですね。しかしその本質はカリキュラム開発です。全国の先進的なSSH校の取り組み成果が、次世代のカリキュラムの大きな方向性を決めるヒントになります。その意味でも文部科学省も大きな注目をしています。

 

Q、一般的なSSHのイメージとは随分違いますね。では、文京学院ではSSH指定校としてどのようなカリキュラムを設定したのですか。

 

棚橋)「生命の営み」という大きなコンセプトを設定し、このコンセプトに添って、様々な学校設定科目を設けました。高校1年生では「SS国際情報」という科目が必修となり、1年生は全員この科目を受講しています。

 

Q、「生命の営み」というコンセプトの下、文京学院でSSH関連の授業を受けたとして、どういった「力」が生徒に付くのでしょう。

 

椎名)一個で言えば「グローバル・サイエンティスト」の育成、もっとわかりやすく言えば「女性理系研究者」の育成こそが私たちの科目設定の目的で、「生命の営み」というコンセプトを通して、将来研究者になるべく研鑽を積む、これが私たちの意図するところです。

 

Q、具体的な学びの道筋を教えてください。

 

椎名)まず高校1年生は先ほども出てきましたが「SSH国際情報」という科目を全員が受けます。この科目は大学の学際(専門横断)的な講座をイメージしていただくと分かりやすいのですが、「理科・数学・家庭科・英語」を統合した科目で、パソコンの基本的操作方法から始まって、科学的探求の姿勢、さらには学術プレゼンテーションの基本を学びます。例えばパソコンの操作方法一つとっても、単に操作方法を学ぶのではなく、学びの内容が課題研究と結びついているという点が特徴です。

 

Q、なるほど。全学的な取り組みとしてはすばらしいものですね。文京には理数クラスがあり、このクラスこそがSSH校の中核だと思うのですが。

 

椎名)その通りです。理数クラスにはさらに必修の科目があります。

 

Q、どういったものでしょう。

 

椎名)科目の名称としては、「学際科学」と「SS数理演習」となります。前者は、「SS国際情報」をさらに高度化したものです。また後者の科目は、実際に「落とした卵を割らない方法」「濡れタオルが乾くまで」など実践的テーマに携わり、科学的思考の課題研究の基本を学びます。特に「落とした卵を割らない方法」は、いわゆる「エッグドロップ」という有名な実験で、文京学院では他のSSH校を招き、コンテスト形式で実施しました。

 

Q、大学の基礎講座のようですね。

 

棚橋)そう言えばそう通りですが、実はこういった実践型の科目は、「正解がどこかにあり、与えられた正解を探す」という姿勢を壊すためにあるのです。

 

Q、といいますと。

 

棚橋)高校生はどうしても答えを求める姿勢になりがちです。テスト、入試はあらかじめ設定された解答にたどりつくことが重要ですが、科学的思考には当然のことながらあらかじめ設定された正解は存在しません。結果よりもそれを追う過程、姿勢こそが大切なのです。

 

Q、いわゆる座学とは異なる姿勢ですね。

 

椎名)もちろん一般的な座学での学びも重要です。文京学院では「科学塾」という課外講座がありますが、そこではいわゆる受験対策にも通じる座学のみを取り扱っています。SSHカリキュラムとは完全に住み分けています。

 

Q、なるほど。理数クラス1年生はこの三つの講座を受けているわけですね。

 

椎名)この三つの講座は,文京学院の理数クラスが全員必修で受けなければならないのですが、それ以外にも希望者が参加できる講座が用意されています。これらは理数クラスでなくても、あるいは本学園の中学生も参加できるものです。

 

Q、具体的にはどういったものでしょう。

 

椎名)1年生限定の任意講座としては「グローバル環境科学」という講座があります。昨年はこの講座に参加した生徒は「小笠原」の島を訪れ、フィールドワークを行いました。他にも学年横断的な任意講座が多彩に用意されています。

 

Q、それはなかなか心躍る学びですね。任意講座も気になるところですが、2年生の必修科目についてまずお聞かせください。

 

椎名)2年生が全学的に取り組む科目はありませんが、理数コース2年生は「SSプレカレッジⅠ」「SSコミュニケーション」という科目を受けなければなりません。

 

Q、少し気になることがあるのですが…一つは理数クラス以外の生徒でこういった講座を受けたいと考えた場合どうすればいいのでしょう。また理数クラスコースでこういった実践的な授業は嫌だ、受験対策だけをやってほしい、という要望が出たりはしないのですか。

 

棚橋)順に答えていきます。まず理数クラス以外の生徒は2年生になると必修科目は確かになくなります。しかし任意の講座には参加が可能です。そこでは必修科目と同じコンセプトで内容が練られているので、そちらに参加してもらいます。実際にSSH関連の科目は理系型で、さらに大変な意欲と努力が必要なので、文系選択者が多数を占める他クラスからの参加は少数です。ただし参加を希望する生徒がいることに間違いはなく、さらにそういった生徒たちは非常に意欲的です。この点は私たちも驚いています。また逆に、こういった他にないカリキュラムであるがゆえに、それを嫌がる生徒がいるかという問ですが、そもそも理数系に進むことを希望して理数クラスに入り、かつそれを将来の職業に見据えているので、消極的に参加している生徒は皆無です。むしろオーバーワークになるのでは、と心配になる生徒もいるくらいです。

 

Q、それは大変よいですね、すごいことだと思います。では理数クラス2年生の話を改めてお願いします。

 

椎名)先ほど申し上げたように理数コース2年生は「SSプレカレッジⅠ」「SSコミュニケーション」という科目を受けなければなりません…

 

(以下次号)

Bunkyo Report No.9:科学塾・SSHプログラム編(3)

12月

11日

2013

科学塾・SSHインタビュー 2013・12・17 at 文京学院

 

 

Q、それは大変よいですね、すごいことだと思います。では理数コース2年生の話を改めてお願いします。

 

椎名)先ほど申し上げたように理数コース2年生は「SSプレカレッジⅠ」「SSコミュニケーション」という科目を受けなければなりません。前者の授業はまさに「プレカレッジ」の内容となっており、大学での専門研究の内容を踏まえ、高校生として知っておかなければならない基礎知識を付けるためのものです。この講座は3年生になると「SSプレカレッッジⅡ」という講座になります。この講座は他のSSH関連の授業、プログラムと連動し、生徒個々の進路状況に応じた課題研究、あるいは論文作成を目指します。

 また後者の授業は英語でのプレゼンテーションを可能にするためのスキルを学びます。この授業も、単なるパソコンソフトの操作ではなく、アイコンタクトやジェスチャーなどの身体的な観点からの方法論を学びます。さらに高度に学びたい者や、プレゼンテーションコンテストに出場し、かつ英語でプレゼンを行いたい者は、2年生と3年生の希望者が参加できる「サイエンス・コロキウム」という授業に参加します。

 

Q、体系的にしっかり構築されていますね。

 

椎名)「グローバル・サイエンティスト」の育成というのは単なるスローガンではなく、その育成のためのプログラムを実践しているということです。先ほど、高校生にとってこれらが負担になるかという質問がありましたが、生徒たちは極めて意欲的に取り組んでいます。したがって決して大げさなことや無理のあることではないのです。

 

Q、他のSSH校でもこれほどの手厚いカリキュラムを組んでいるのでしょうか。

 

棚橋)生徒達の探求はプレゼンテーションへと昇華するのですが、SSH指定校が集まり生徒たちの研究成果を発表する場があったり、中には全国のSSH指定校が集まるコンテストがあったりします。こういったコンテストで強い高校は、やはり相当な濃いカリキュラムを構築しています。

 

Q、SSH指定校のすべてがこういった洗練されたカリキュラムを組んでいるわけではないとは思いますが、やはり高度なことに取り組んでいる高校があるのですね。

 

棚橋)確かにコンテストなどでの発表をみると、SSH校として研鑽を積み、カリキュラムを工夫してきた高校は強いですね。

 

Q、文京学院もそういった他校が集まった発表の場やコンテストなどに出場しているのでしょうか。

 

椎名)生徒たちは積極的に参加しています。初年度は手探りの感覚が若干ありましたが、2年目となった本年からは生徒たちの熱も高まり、大変厳しいものなのですが、コンテスト参加を希望する生徒が大変増えています。

 

Q、そのためのプログラムがあるのでしょうか。

 

椎名)SSH設定科目に、「SSクラブ」と冠した授業が三つあります。それらは「SSクラブ・プレリサーチ」「SSクラブ・リサーチプログラム」「SSクラブ・チャレンジプログラム」なのですが、これらは任意参加の講座で、生徒各自が課題を発見し、それを探求していくためのプログラムです。ちょうど部活動のような形で参加していると考えるとよいと思います。

 

Q、具体的どのようなことを実践しているのか教えてください。

 

椎名)生徒たちの取り組みは必修科目と任意のSSクラブ関連の講座によって構成されています。もちろんSSクラブは基本的には任意参加ですが、高校理数クラスに属する生徒は、上記のSSクラブ関連の講座に参加し、プロジェクトメンバーとして何か一つテーマをもって探求することを推奨しています。理数クラスは高校1年生で全員がSSクラブに所属し、一人最低1テーマは研究テーマを持ち、活動しています。結果、全員がSSクラブで何らかのプロジェクトに入り学んでいます。

 

Q、理数クラス以外の生徒も参加可能ということですね。

 

織田)可能です。実際、文理クラスの生徒たちも参加しています。また中学生は中学科学塾に所属し、理系科目の座学と理科実験を行っています。本人が希望すれば、SSHクラブに入ることは可能です。ゆえに「SSクラブ」関連の講座は一つの流れを構成しており、理数コース以外の生徒でも参加できるようになっています。「SSクラブ・プレリサーチ」では高大連携講座(大学の協力を仰いで行われる大学・高校が連携した講座)が多様に設定され、先端技術を活かした多様な演習を実施しています。例えば「遺伝子研究」「機能性分子化学」「医科学」「数理・工業科学」「再生医療最前線」などの演習が用意されています。また「SSクラブ・リサーチプログラム」では各自の興味分野にしたがい、それらに必要な仮説・検証方法を考えながら研究活動を行うものです。これは1年生から3年生まで希望すれば参加できます。最後の「SSクラブ・チャレンジプログラム」では各種のコンテストに出場するためのプログラムです。

 

Q、ご指摘の通り部活動に似ていると思いますが、先生方はこれらのプロジェクトにどうように関わるのですか。

椎名)理科の教員を中心に基本は示唆し、支援するという立場です。研究に対する基本姿勢や方法論は理数コースの必修科目や「SSクラブ・プレリサーチ」で学びますので、各自の課題に取り組み、発表やコンテストに向かう際にのみ、教員はよい距離感で支援し、見守るように心がけています。教師が手をかけ、教師の方向性に従って研究が為されるということは,文京学院のSSHプログラムの主旨に外れることですから。

 

Q、確かに「世界で活躍できる理系女子を育成する」というコンセプトに見合ったものですね。しかし例えば発表の場やコンテストといってもどういったものがあるのでしょうか。学校の中だけで完結しても外部からの評価は寄せられないですよね。

 

棚橋)発表の場は相当数存在しています。SSH指定校があつまるポスターセッションの大会などは各地で行われています。ポスターセッションとは発表者にブースが与えられその中でポスターを掲示し、来場者に都度説明するもので、専門学会ではよく見られる発表形式です。学会では多くの研究者が発表を行いますが、学会会場ではこのポスターセッションをするための小ブースが並ぶ光景が見られます。観覧者はブースをまわって、説明を聞き、積極的に質問をします。これが専門学会ではなく高校生同士の発表の場だとしても、内容に変わりはありません。高校生の発表の場だとしても来場者には大人がいます、そしてその多くは理系の教師や研究者です。ポスターセッションは単なるプレゼンテーションの場というわけではなく、こういった多くの専門家の精査を受けるものなのです。

 

Q、例えばどういった発表の場をこれまで得たのですか。

 

椎名)例えば本年は新潟の朱鷺メッセで開催の第23回国際形態学会へ本校の高校生が参加することができました。学会のポスターセッションに高校生が応募するということはまずないことですが、誰でも応募できるのが原則なので、学会でのポスターセッションに参加しようということで予選に応募してみたところ審査を通過し、そのプロジェクトに取り組んでいた本校の生徒数名が、学会のポスターセッションに参加することができました。

 その学会は国際学会で、多くの外国人研究者が来場し、中で高校生がポスターセッションに参加しているところを見つけ、皆一様に驚いていました。程なく、研究者たちがブースに集まり、「なぜ参加したのか」という疑問をぶつけたり、ポスターに関する質問をどんどん投げかけたりしました。さらに人だかりができ、相当に注目を集めたからか、学会の運営本部から、これもまた異例ですが、最終日のレセプションに参加しないかという申し出がありました。こちらはそこまでの準備をしていなかったので大変とまどいつつレセプションに参加させていただきましたが、これに参加した生徒は大変よい経験になったと思います。生徒たちは一様に研究の精度を上げ、さらに語学の勉強をしなければならないと痛感しました。

 

Q、スケールが大きいですね。コンテストにはどういったものがあるのでしょう。

 

織田)コンテストも決して少なくありません。高校生のプレゼンテーションコンテストならば、3月に筑波で「つくばサイエンスエッジ」という科学コンテストがあります。これは全国の中学生高校生が、理系研究のアイデアを競う場で、今年度から「オール・イングリッシュ」で発表するポスター部門も新設されたのですが、文京学院は今年度日本語部門のポスターセッションの部において第1位になりました。次年度は英語のプレゼンでも成果を出したいと思っています。また毎年8月には、全国SSH生徒研究発表会が横浜パシフィコで開かれ、この発表会にはSSHの指定を得た昨年に初めて参加しました。昨年は生徒たちも手探りで、参加希望者もそれほど多くなかったので全員参加できましたが、今年は恐らく校内選考が必要だと思います。生徒たちのプロジェクト遂行に関する意識が相当に高まっているように思います。

 

Q、それは大変楽しみですね。では最後に二つ質問させてください。タイの高校との交流の件、あとは大学受験支援についてです。

 

織田)本校はタイのプリンセス・チュラボーン・カレッジ・ペッチャブリー校(PCCP)と提携しています。この提携はSSHの指定を受け、理数教育をするアジアの高校と連携しようということで始まりました。まずは本年,夏に文京の教員チームがタイを訪れ、そこで私は物理の授業をタイ人高校生を相手に英語で行ってきました。大変反応もよく、交流の第一歩としては成功だったと思います。この授業と全く同じものをこの12月に文京学院でも行いました。我が校の生徒も大変良い反応を示してくれました。英語で行う物理の授業ということでやや懸念もあったのですが、生徒たちは問題なく授業に参加することができていました。来年の1月、つまり来月ですがいよいよタイ訪問の生徒のチームが教員の引率の下、チュラボーンを訪れます。先方では普段の研究内容について英語でのプレゼンテーションをする予定です。

 

椎名)大学受験については、文京学院は科学塾という講座を課外に設定しています。これは理数科目を中心に座学の勉強を行うもので、いわゆる受験型学力伸長の支援講座となっています。ただしSSHプログラムが軌道に乗るに従って、理数コースに属する生徒のいわゆる偏差値は上向きの傾向をはっきり示しています。理系研究は否応もなく数学的思考、理科の学力を必要としますので、生徒たちがSSHプログラムに熱心になればなるほど座学の力も要求されます。その点での相乗効果は目を見はるものがあります。また英語でもプレゼンも基本となりつつありますので、語学力という点でも相当な成長が見込まれます。

 

Q、非常によく分かりました。SSH校の活動はあまりよく知られていませんが、しかし相当な盛り上がりを見せていることが分かりました。理系教育に対する意欲は相当に高まっているように感じられるので、文京学院が示すような先進的な取り組みは大変貴重ですね。

 

棚橋)本当に大きく変化するのはこれからだと思います。どこの大学に何人という受験成果は大切ですが、それ自体を目的にしてしまうと、大学に入って何をすべきか迷う学生になってしまう可能性があります。大切なことは、大学での学びを意識しながら、社会において有為な人材となるための準備を高校時代にすることです。その意味で、文京学院のSSHプログラムは大きな意義を有していると思います。何よりも生徒たちがいきいきとテーマ研究に取り組んでいる姿が私たちに力を与えてくれます。

 

Q、長時間ありがとうございました。さらなる文京学院の進化を楽しみに見つめていきます。

Bunkyo Report No.4:英語教育編(1)

10月

25日

2013

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11月は3週にわたって国際塾を始めとする文京学院の英語教育について、国際塾ご担当の島田先生、教頭で英語担当の北野先生にお話をうかがいます。文京学院の英語教育は課内・課外において独特な取り組みを展開していますが、学校が主宰する本格的な英語学習の場である国際塾、課内の英語授業など、その先進的な特徴を余すところなくレポートします。

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インタビューに先立って、文京学院の英語教育の先進性が理解できるよう、読者の皆さんに現代の英語学習の状況について簡単に説明します。特に現高校1年生から大きく変化した新課程・指導要領=教科書の変化には注目すべきものがあります。

そもそも日本の英語学習は、文法中心の読解主義を基本とし、長らく「話す」「聞く」という側面を軽視してきました。しかし1990年前後に、指導方針を転換させ、文法を前面に出してきたそれまでの英語カリキュラムを見直すことになりました。分かりやすい変化として、まず「オーラル・コミュニケーション」という「聞く・話す」を中心に扱う科目が必修とされ、その後、さらに学習指導要領を改訂し、読解中心に作られていた基幹科目「英語Ⅰ・Ⅱ」で「話す・聞く・読む・書く」の4技能を扱うようになりました。しかしこの変化は、日本の英語教育のコンセプトを大きく変えるところまでの影響力を持つことはありませんでした。というのも、高校のカリキュラムの変化は限定的で、かつ大学受験英語問題の出題コンセプトは変化することがなかったからです。この90年代の改変では、高校生たちの大規模な意識変化を促すことはなく、それまでの英語学習の有効性が保たれたままとなりました。

しかし21世紀に入り、少しずつ社会状況が変わり、ここ数年で高校生やその保護者の英語観が大きく変わってきました(確たる統計はありませんが)。その背景には近隣アジア諸国の英語教育の急激な伸長、大学教育の場でのグローバル型語学講座の広がり、そして何よりも従来型の英語学習に飽き足らない意欲的な高校生の台頭、などがあります。特に都市部の高校生の中には、海外大学への進学を視野に入れる者、国際教養系の大学を志望する者が、無視できないほど増えています。こういった高校生たちが求める英語力は、「読解偏重」ではなく「読む・書く・話す・聞く」の四要素重視で、これは一言で言って実践重視の英語力と言えます。

グローバル化によって、急激に人と人の接触が増える状況になり、英語は単に読むだけのものから、実際に「使う」という観点が求められるようになりました。この状況変化を受けて、現高校1年生の英語カリキュラムが大きく変貌し、英語教科書は「コミュケーション英語」というタイトルになり、その根幹コンセプトに「コミュニケーション」が置かれるようになりました。また前述したように、現実の変容に合わせて、四技能を求めるTOEFL型の英語学習を求める高校生が確実に増加し、首都圏ではこれらに対応する塾や予備校が台頭しつつあります。

以上の状況から、今後大学受験も含め、この四要素重視型の英語学力評価が一般的になってくると考えられますが、文京学院はこういった大きな変化が顕著になる5年前から国際塾を開講し、まさに今求められようとしている新しい英語学習のコンセプトを具現化してきました。

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文京学院英語教育インタビュー 2013・10・25 at 文京学院

 

Q、文京学院の英語教育は極めて先進的なのですが、まずはその一つの柱である国際塾からご説明いただきます。

 

島田)国際塾は文京生対象の課外講座で任意のものです。自分が取りたい講座を受講するということが基本で、いわゆる正規の授業ではなく、放課後に行われている英語に特化した課外講座だと考えてください。通年の講座は22あり、年間18回の講義があります。

 

Q、なるほどということは生徒全員が受講しているわけではないのですね。

 

島田)その通りです。春に募集をするのですが中学1年生、高校1年生の参加率が高く50%弱で、学年を重ねる毎に、この参加率は減り、最終的には中学生で35%程度、高校生では25%程度となります。講座は非常に内容が濃く、また任意なので、途中でリタイアする生徒も現実にはいます。反面、無学年制なので学年に関係なく高度な講座に参加することも可能です。

 

Q、講座のラインナップはどうなっているのでしょう。

 

島田)詳しくは文京学院のホームページの国際塾のページをご覧になっていただきたいのですが(http://www.jhs.u-bunkyo.ac.jp/study/kokusai/index.html)、国際塾のレベルは、Pre-IntermediateからSuper Advancedまでの4つのレベルに分かれています。ベネッセが主宰する英語コミュにケーション能力テストGTECのテスト結果を参考に、生徒の皆さんに参加する講座レベルを決定してもらいます。講義は年間18回、1コマ100分、前にも述べましたが、無学年制で、英語力に応じて上級レベルの講座にも参加することが可能です。

例えば中学生をはじめとする英語初学者対象ならば、「読む・書く・話す・聞く」の四要素を総合的に学ぶ基礎重視の講座を勧めます。一方高校3年生が多数を占める最上級のレベルでは、国内の難関大学進学に繋がる高度な英語力を養成することは自明のものとして、海外滞在、留学、TOEFL、SATなどを視野に入れ、最終的には海外の大学で即通用する総合的な英語運用能力の向上を図っています。国際塾のカリキュラムは、国内の大学入試対策に結果として役に立つのですが、しかしそれを目的としているわけではないというところがポイントです。「読む・書く・話す・聞く」の四要素のバランスを取りながら、社会に出て英語を知的に使うことができるようにすること、あるいは海外の大学などで学び、英語を実践的に運用できる力を身に付けること、に重きを置いています。

 

Q、生徒の皆さんはどのくらいのペースで国際塾に参加しているのでしょうか。

 

島田)中学生の間は無理をせず、基礎レベルの総合英語型講座を週に1講座受講することを原則としています。課内の英語の課題も決して少なくないので、週に1度のペースはちょうどよいと思います。

高校生になると理論的には週4日4講座以上受講することも可能ですが、それだけの講座を受講し、こなすのは困難なので、週に1講座、多くても2講座を基本として受講することを参加者には推奨しています。また部活動に参加しながら、国際塾の講座を受講できるように、同一講座を複数曜日に設けるなどの工夫もしています。国際塾はあくまでも課外の任意講座なので、お稽古事や部活などと上手く調整して、週に1講座程度を受講しその内容を身につければ、しっかりとした英語力を身につけることができるようになっています。

ただし例外が一つだけあり、海外大学を目指すという場合には、より多くの講座を受講することを推奨し、特に高3生には、可能な限り講座を受講するようアドバイスしています。そういった生徒は本当に大変なのですが、がんばって参加しています。

 

Q、学校の課外講座で任意となると、英語の場合、受験英語対策や英会話教室のようなものを想像してしまうのですが…

 

島田)そういった誤解が実は少なくないのです。生徒の皆さんも、国際塾についてよく理解したうえで文京に入学している場合は大丈夫なのですが、そうでなければ、国際塾は会話主体の英会話学校ではないのかと思われてしまうことが残念ながらあります。確かに中学レベルの基礎講座では、「話す」重視の会話型カリキュラムはあるのですが、「聞く」から「話す」というプロセスを重視しているので、単に一般的な英会話としてあるのではなく、プレゼンテーションと結びつけて、より実践的かつ知的な観点から英語力を底上げできるように配慮されています。基礎的な講座では「読む」「書く」はやや淡く、「聞く」から「話す」をやや濃く扱っていますが、それでも一般的な英会話講座とは一線を画するものです。

 

Q、では例えば主に中学生が参加する基礎的な講座は、課内の英語とどう違うのでしょうか。国際塾は課内の英語の補完補習なのか、それとも別なものなのでしょうか。

 

北野)ご存知のように、新課程の英語では、より「読む」「書く」「話す」「聞く」の四技能のバランスが求められるようになりました。しかし正課、課内の授業では時間的な限界がどうしてもあります。正課・課内の英語授業も実践的な英語能力が身につけられるように配慮されているのですが、例えば自己紹介といった基本的なプレゼンテーションでも、一人一人をきめ細かく指導することは様々な制約から困難です。こういった手の届かないところを国際塾では取り扱っています。

 

Q、なるほど。義務教育であり、定められた教科書が中学にはある以上、授業はそこに準拠する必要がありますから仕方ないかもしれません。具体的に一点、「手が届かないところ」のいま一つの例を説明願います。

 

島田)「読む」ことは、英語学習の起点とすることができるもので、そこで得た語彙、構文を手掛かりとして「話す」「書く」力に繋げていけるものです。しかし中学生から高校生にかけて、時間や一クラスの人数などの条件から、どうしても課内の授業では「読む」ことに活動が偏りがちで、「話す」「書く」というアウトプットの活動に十分な時間を掛けることができません。一方国際塾では、「読む」ということが、「話す」「書く」また「聞く」と密接した形で進みますので、その点で、四技能を総合的視点から取り扱い、新課程英語カリキュラムをより深化させていると考えることができます。この「つながり」をより深く意識することができるのが国際塾の特徴です。

 

Q、生徒たちの意欲・モチベーションはどうなのでしょう。

 

島田)正課・課内の授業との最大の違いは、まず無学年制なので、レベルさえ合えばどんどん上級講座を受講できる点にあります。加えて、国際塾は、「英語が好きだ」「英語をより深く学びたい」という意欲を抱いている人の集まりだと位置づけているので、課内の授業との雰囲気の違いがあります。正課・課内の授業では、英語が好きであろうとなかろうと必ず受けなければならないものですが、国際塾はあくまでも任意なので少なくともそういった点での違いは明確です。また、講座のレベルが上がるにつれ、各講座リーディング、ライティング、スピーキング、リスニングと内容が絞り込まれていきますので、教科書で習う四技能を個々に深めていくことが可能だという点も課内の授業との違いです。

 

Q、ということは、学校のテスト対策とはつながっていないと考えてよいのですか。

 

島田)もちろんです。国際塾に参加すれば確実に英語力は上がるので、中間・期末テストの成績が結果として上がることはあるかもしれません。しかし中間・期末テスト対策は、国際塾のカリキュラムの中には入っていません。逆に、中間・期末1週間前は、部活動同様、国際塾の講義はお休みとなります。

 

Q、大学受験との関係はどうですか。

 

島田)国際塾のカリキュラムは、現在大学で盛んに行われるようになった、グローバル型の語学学習と似たもので、大学受験対策を想定していません。しかし、四技能を深めていくというコンセプトが、大学受験とクロスする場合もあります。高校3年生になると、国内の大学の入学試験を目指して、いわゆる英語の受験勉強を始める生徒が多数現れます。もちろん日本の大学入試は「読む」中心ですので、それに特化した勉強を各々進めていきます。受験でリスニングが求められ国際塾の講座を受講し、読解を学びながらオールイングリッシュの講座を受講することによりリスニング力を養い、受験のリスニングにも難なくクリア、希望大学に合格しました。センター試験はもちろん国際教養系の大学でも、リスニングが求められるケースが多く、四技能重視の姿勢を打ち出す大学が増えているのも事実です。国際塾は、将来、社会に出た際に社会から求められる人材となるべく、先進的なカリキュラムを組んでいるわけですが、それが結果として受験に役に立つということも近年増える傾向にあります。

 

Q、カリキュラムの特性として、他にも特徴的な要素はありませんか。

 

島田)高校生2、3年生が中心となって受講するライティング講座も特徴的です。

 

Q、ライティングは一般的な予備校でも指導に苦慮する領域ですが。

 

島田)ライティングの指導は相当に工夫しなければその効果がなかなか上がりません。書いて即ネイティブが添削、コミュニケーションを重ねながら書き手の真意を探り修正をかけていくというのが指導の根幹です。国際塾では、ライティングはまさにこの流れで指導をしています。

 

Q、それは驚きです。大学受験対策予備校では添削返却は1週2週後というのが多く、書き手の真意を問うことなく採点されてしまいますし、小規模の英語塾でこの形を導入しているところもありますが、相当に高額な授業料がかかります。なぜライティングにそこまでの配慮をしているのでしょうか。

 

島田)ライティングは、私自身、英語技能四要素の中で最も知的な領域だと思います。それは同時に極めて意欲的な努力を要するということで、たくさんの生徒が一斉に参加するということは想定していません。精鋭化することを恐れずプログラムを組んでいるわけです。例えば日本の大学受験でも、難度の高い大学になればなるほどライティングの力を求めてきます。国立大学、国際教養系の大学などではその傾向は極めて顕著です。ある意味、ライティングについて高度な能力を身につけることが、知的な世界で英語を使う条件だと考えています。

 

Q、非常に示唆に富む指摘だと思います。四技能の中で、「読む」や「話す」は予備校や英会話学校でも指導を受けることが一般的には可能です。最近はスカイプによるオンライン英会話講座も普及していますので、「話す」ということを学ぶ場も増えてきています。しかしライティングに力を入れているということは、まさに四技能の最も習得困難なピースを埋めることだと言えるのではないでしょうか。

 

島田)ライティングばかりが注目されると困るのですが(笑)。国際塾のグラマー(英文法)も極めて個性的で、一般的な文法学習と一線を画しています。

 

Q、具体的にどういう点で個性的なのでしょうか。

 

(以下次号)

Bunkyo Report No.5:英語教育編(2)

10月

25日

2013

国際塾インタビュー 2013・10・25 at 文京学院

 

(前号の続き)

 

島田)ライティングばかりが注目されると困るのですが(笑)。国際塾のグラマーも極めて個性的で、一般的な文法学習と一線を画しています。

 

Q、具体的にどういう点で個性的なのでしょうか。

 

島田)まず講義は英語で行われます。教材として使用されているのは、世界的に定評があり、かつ日本の大学の英語の講義でも使われている『Grammar in Use』を教材として使用しています。この教材は本当に優れていて、日本の問題集と違い、英文法を英語の文脈の中で理解するように配慮されたものです。

 

Q、なるほど。近年『Grammar in Use』は日本の教育現場にも急速に浸透していますね。ここで読者の皆さんに『Grammar in Use』とは、どういった教材であるのか、簡単に紹介します。『Grammar in Use』は、英国、フランス、ドイツなどのインターネット書籍販売サイトにおいて、英文法部門でトップセラーを続ける教材で、日本でも多くの大学が英語の教材として使用しています。そもそも英語のみで書かれた教材なので、英語を英語で学ぶという仕組みになっています。ゆえにいわゆる日本の受験参考書などの英文法教材とは異なり、一つ一つの表現がどういった状況で使用されるのか、例文が豊富に用意され、英語の構造の中で英文法を学ぶ仕組みになっている点が特徴です。では、この『Grammar in Use』を使用するメリットを教えてください。

 

北野)この教材も一つの象徴ですが、国際塾だけでなく文京学院の課内の英語のコンセプトもまさに、英語を英語として学ぶということが主眼に置かれています。英語を英語で考えるメリットのひとつは、個々の文法事項を学ぶうえで、ここの表現の使い方が深く理解できる、敢えて言えば腑に落ちるという点にあります。

 

Q、と、言いますと。

 

北野)例えば、「今日中」という表現を英語に置き換える時、「with in today」

という表現を思い浮かべがちです。今日「中」なので「in」が必要だろうという判断です。実際に、インターネットで「with in today」を検索すると典型的な誤用として多数ヒットします。しかし「today」には「今日中」という概念がすでにあり、「今日」という概念に比べて「today」という概念はやや幅が広いのです。当然ですが、両者の概念範囲がぴったりと一致するわけではありません。

 こういったことが例えば仮定法を学ぶ、時制を学ぶ、といった文法学習の個々の局面にも見られ、日本語の概念構造に英語の仕組みをあてはめるという歪な操作をしてしまいがちです。特に日本の従来の参考書では、シチューションから切り離された短文で文法事項を学びます。しかしそれでは社会人になっていざ英語を知的実践的に使おうとしても限界が生じてしまうのです。

 

Q、なるほど、知的に実践的に英語を使うという前提で、指導方針を練られているわけですね。

 

島田)今の高校生の皆さんが社会人になる頃には、ますます知的場面で英語を使う必要性に迫られると思います。また仮に国内にいても、仕事で英語を使うという状況はますます増えてくると思います。部活を懸命にやって、体育系の学部に進み、例えばスポーツ・インストラクターになったとしても、顧客に外国人を迎えることは、今現在の東京の状況においても決して珍しいことではありません。誰もがこの状況から免れることはできません。まさにこの現実こそが実践的に、かつ知的に英語を使うというところから逆算して指導法を考えていかなければならない理由の一つです。

 

Q、従来の文法学習と比較して深いということですか。

 

島田)結局、留学したからといって文法ができるようになるとは限りません。話すことはとても大切で、その点においても基礎からしっかりと取り組むことは重要ですが、しかし「単に話す」ということと「知的に話す」ということは根本的に異なります。前にも述べましたが、いわゆる典型的な英会話を学ぶ場なのではないかと国際塾は誤解されることが多いのですが、「話す」という技能を考えた時も、それは単に「話す」ということを求めるのではなく、プレゼンテーション指導のような形を模索するべきだと考えています。これは次年度の課題だと考えていますが、いずれにしろ「知的に書く・話す」となった場合、英語で英文法を学ぶ場は決定的に重要だと思います。

 

北野)文京学院の課内の英語指導でも、『Grammar in Use』から多くの示唆を得ています。私自身、昔は従来型の文法学習を指導するところから出発したのですが、教員になった早い段階で、文京学院のネイティブの先生の示唆や『Grammar in Use』からの刺激を受け、英語指導の方針が転換し、自分自身とても深くなったと思います。

 昔から日本の学校では、英語を書くということをとても重視してきました。今のお父さんやお母さんの世代でも、教科書が変わった現代の中学生でも、確かに「書く」という課題は学校かから出されていると思います。しかしそれは結局、和文英訳であり、単なる模写をしているに過ぎないと言わざるを得ません。全く教育効果がないという訳ではありませんが、それは書くというより書かされているというのが現実です。残念ながら一度にたくさんの生徒の書いたもの採点するためには、模写をしてもらうしか方法がありません。しかし文京学院の英語は、この「模写をしてよし」とする英語指導を乗り越えていこうというところから出発したといっても過言ではありません。

 

Q、文京学院では英語の実践的な使用を意識しているということですね。何か特徴的な試みがありますか。

 

北野)そもそもとりあえず話せるようになりたいと考える割合が日本人一般ではいまだ高いと思います。まだ書くことの重要性に気づいていないと言えるかもしれません。しかし本校ではタイの高校との交流を図っています。その際に、生徒はカタコトで話すことはできても、メールでのやり取りになると途端にハードルが上がってしまうのです。文法的に正しいか、スペルの間違いはないか、ということを考える営みは、単に話すことに比べて相当に知的な行為です。その意味で、話すことのもう一歩先の、「書く」という技能を考えた時、国際塾や文京の課内英語で取り組んでいる文法学習はとても重要なものになります。

 

Q、では従来型の日本の英文法教材は使用しないのですか。

 

北野)いいえ。実際には日本の英文法問題集も学校では使用しています。日本の大学入試の出題頻度に基づいて編集された英文法問題集は当然日本の大学の受験には役に立ちます。なので典型的な受験参考書、問題集も、正課の英語ではしっかり教材として使用しています(笑)。

 

Q、英語教育は確かに転換期ですが、従来型の英語指導も加味しているということですね。ある意味、安心される方も多いと思います(笑)

 

北野)ここは誤解して欲しくないところですが、「読む」「書く」「聞く」「話す」の四技能を考えた時、日本の大学入試の多くは「読む」に偏重して問題が作成されています。偏重の善し悪しはさておき、生徒たちはこの現実に対応しなければなりません。その対策のための道具として考えれば、日本の参考書や問題集は非常に上手く編集されています。多くの生徒は日本の大学に進学する以上、この点での対策を疎かにすることはありません。とはいえこれは四技能のうち「読む」という局面における成長にしか過ぎないという現実も直視しなければなりません。英語を知的局面で使うとなれば、やはり「読む」力だけでは限界があります。

 

Q、では国際塾や文京の英語指導は、大学受験と実践的な英語力との向上を分けて考えているということですか。

 

島田) いいえ、それは分けて考えるべきものではありません。英語で英文法を学んだり、ライティングに力を入れることは、結果として日本の大学入試にも確実に役に立ちます。例えば『Grammar in Use』を経たうえで、あるいは『Grammar in Use』を併用して日本の英文法参考書に取り組むと理解が深く早く進みます。『Grammar in Use』に対するネガティブな評価があるとすれば、日本の大学受験対策に限って効率的でないという点です。しかし国際塾の目指すところは日本の大学入試を踏まえつつ、さらにその上を行くことです。

 

Q、今の教科書・指導要領の変化を考えると、日本の大学入試でも文京がコンセプトとするような英語力を測るという流れが出てくるように思えます。実際、センター試験の仕様変更に伴って、様々な試みが目につくようになってきましたと思うのですが。

 

北野)そもそも国際塾を始めるにあたって私たちが考えたことは、今や多くの大学のグローバル型英語講座で具体化しています。これを高校で取り組もうとするということは極めて先進的なことだったと言えます。そして最も重要な点は、国際塾の創設に伴って、課内の英語指導の再構築が行われたことです。

 

Q、どういうことでしょう。

 

北野)国際塾は課外の時間に任意で参加するものです。あくまで希望者が参加するものですが、課内の英語との連携なくしては、その国際塾の取り組みと学校の英語がバラバラになってしまいます。指導方針を合わせてこそ効果が上がるだろうと考えるのは自然なことです。

 

Q、課内の英語の再構築の要因となったわけですね。

 

北野)そういうことです。例えば文京学院には多読室という部屋があります。約5000冊の英語書籍が開架された部屋が図書館とは別に存在します。これは課内の授業ですべての生徒が、週に1度、多読をするために作られた部屋です。絵本から始まってハリーポッターシリーズはもちろん、さらに知的な書籍まで揃っています。文法学習を通じた英文の仕組みの理解や英文の精読は非常に重要ですが、英語を英語として取り込んでいくためには多読をするということが極めて重要です。多読指導で高名な先生に多読室設営当初から関わってもらい、理論的な背景をもってこの多読室の利用を授業の中で私たちは進めています。

 

Q、学校の課内のカリキュラムや工夫も相当に興味深いですね。課内の英語カリキュラムや補習のシステムなど、国際塾以外の文京学院の具体的な英語指導のプログラムを教えてください。

 

北野)そもそも学校の授業では…

 

(以下、次号)

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